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ハンドメイドで生計を立てられるか?

 バッグを作り始めて3年。正式にビジネスを立ち上げてから、もうすぐ丸2年になる。
 最近しみじみ思うのだ。ハンドメイドで食べていくということが、いかに難しいことかと。

 過去1年は、ビジネスとしてようやく成り立った感がある。贅沢はできないが、自分一人が食べていける程度の収入源にはなった。でも、子供たちを扶養できるかと言われたらおそらくできないし(いや、貧困状態なら一応扶養できるか・・)、現在の我が家の生活費を夫と完全折半できるかと言われたら、(極端に節約しなければ)できない。

 では、今よりも収入を増やせるかと問われれば、おそらく努力と工夫次第である程度は増やせると思うのだが、ビジネスの基本構造を変えない限り、2倍・3倍にはできそうもない。しかし2倍・3倍にできなければ、家計上、「副収入」以外にはなりえないのだ。

 手先が器用だったり、アートの才能のある人なら、自分が作ったものを売って生活できたらなんと素晴らしいだろうと思うだろう。私もそう思った。ところが、実際に挑戦してみたところ、これで生計を立てられるのは、100人に1人かもしれないと思う。

 まず、消費者には見えないコストの多さ。
 材料費や労働費は誰でも思いつくが、コストはそれらにとどまらない。
 材料を見つけて注文するのにも時間と労力がいるし、買ったら買ったで、使わないものも出てくる(無駄になる材料も多い)。商品を作っても、売り物にならない失敗作も一定の割合で出るし、無事完成した商品でも、売れ残るものもある。商品の撮影をするための器具(カメラはもちろん、バック紙、反射板などの道具も)も必要だし、撮影とその後の写真の補正にも相当時間がかかる。商品説明と写真を複数のウェブサイトにアップロードし、お客様からの問い合わせに対応し、ブログその他のサイトを更新する(私の場合、管理しなければならないサイトの数は7つに増えた)。注文が入ったら入ったで、商品を丁寧に梱包し(封筒やパッキング材・名刺・タグ・包装紙・リボン・カードなども常備しなければならず、かなりの投資)、自宅で切手が印刷できるように郵便局の有料サービスに加入し、実際に郵便局にたくさんの小包を運ぶ。ウェブサイトのドメイン、ホスティング、SSL等にも毎月一定の出費があるし、送金を管理するペイパルにも手数料を支払う。パソコンやミシン等の電気代。材料に侵食され、使用不可能になっている、居住スペース(笑)。そして、子供の時間外保育。最後に、自分自身に支払う給料。これらすべて経費。バッグを$50で売ったとしても、当然ながら利益が$50あるわけではない。

 では実質的な利益はどれだけあるか?
 一般的に小売業では、卸売り価格を最低でも2倍にして売るそうだ。でも、ハンドメイドの場合、実際にかかっている上記のようなコストをすべて足して2倍にして卸値、さらにその倍にして小売価格にしたら、とんでもない価格になってしまう。たとえば、大きなトートを作るのに4-5時間かかったとして、その労働費だけで何十ドルにもなる。自分の労働費をいくらに設定するかも問題だが、たとえNY市の最低賃金で計算しても、$7.15 x 5 = $35.75である。時給$10で計算すると$50.00。(でも本当は、特殊技術を要する仕事だと思うので、時給$10では悲しい・笑)それに上記コストをすべて足すと、それだけで軽く$80くらいになってしまう。ではそれを4倍にしたところ、$320で誰が布のトートバッグを買うだろうか?大量生産品が設定するマーケット・レートというものがあるので、よほど付加価値がない限り、まず売れないだろう。というわけで、ほとんどのハンドメイド品の価格設定には、通常のフォーミュラは使われていないと思う。(私が見た限りでは、ほとんどのハンドメイド作家は、卸値で一般の顧客に販売している。)

 このように、本来は卸値であるべき価格で作品を一般に販売しても、絶えずお客様が買ってくだされば、生計は立てられる。問題は、安定した売り上げを維持することが極めて困難なことである。

 現在のように景気が後退し、消費が全体的に落ち込むと、生活必需品とはいえないハンドメイド品の売り上げは低下する。また、ファッション関係の商品は、常に目新しいデザインを生み出し続けないと、すぐに飽きられる。消費者は気まぐれだ。次から次へと優れたデザインを出し続けるエネルギーが枯渇すれば、その時点でビジネスとして成り立たなくなる。そして、成功すればするほど、似たような商品を作る競争相手も増える。

 では、ハンドメイドで食べていくための条件とは何なのか?
 一にも二にも、「特殊性」であるという結論に達した。
 決して他では手に入らないものであれば、卸値で叩き売りせず、従来のフォーミュラに従って正当な小売価格をつけても、売れる。景気が低迷しても、根強い人気がある。競争相手が真似しようとしても、容易には真似できない。

 それがまさに、創作活動で生計を立てている著名な画家や、陶芸家や、伝統工芸の職人のエッセンスではないか?

 「好きな世界で食べていこう」と思っている皆さん。あなたの作るものは、唯一無二のものであると言えますか?もしそうでなければ、私もあなたも、遅かれ早かれ、凡庸の壁にぶつかることになるでしょう(笑)。

 もちろん、ハンドメイド一本で生計を立てなければならない状況にない人もいる。副収入としての位置づけであれば、話はだいぶ違う。(それでも利益を出すことは容易ではないが。)とりあえず生活できる状況であれば、同程度の収入を得られる他の仕事をするよりも、楽しいことは間違いない。

 いずれにしても、ずば抜けた「特殊性」がない限り、ハンドメイドで裕福になることはまずないと言えよう(笑)。お金持ちになりたい人は、今すぐ他のキャリアを目指すべし。
by oktak | 2008-12-04 09:22 | ビジネス
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