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"Notes on a Scandal"

 Judi Dench、Cate Blanchett主演、Richard Eyre監督の"Notes on a Scandal"を観た。この作品は、同名の小説を映画化したものらしい。

 舞台はロンドンのsecondary school。Judi Denchが演じるのは退職間近の歴史教師、Barbaraで、Cate Blanchettは新米の美術教師、Sheba。Shebaは20歳くらい年上の夫(Bill Nighy)と15歳の娘、12歳のダウン症の息子と暮らしている。不幸せではないものの、妻として、母として背負う重荷に疲れ、「理想の生活と現実のギャップ」に諦めに近い不満を抱えている。一方Barbaraは家族もパートナーもおらず、一人暮らしで、唯一心を開ける相手は、毎日つけている日記。

 BarbaraはShebaに強烈に惹かれ、彼女の友情に依存していく。あるとき、Shebaが15歳の生徒と性的関係を持っているのを知ったBarbaraは、その秘密を利用してますますShebaの生活に侵入していく・・・。

 ドロドロした題材なので、あまり楽しめないかと思ったが、主演の2人の演技が実に見事で、心理描写が真に迫っていて、心に残る作品だった。

 人間にとってもっとも耐え難い苦しみは、孤独ではないかと常に思っている。息が詰まるような孤独にさらされたとき、それに耐える強さを持った人もいるかもしれないが、大部分の人は逃れようと必死にもがくのではないだろうか。そしてもがきながら、寂しさをひたすら内側に向けて、鬱状態になっていく人と、外に向けて、誰か(何か)に依存していく人がいるのかもしれない。Barbaraの行動は、異常ながらも、とてもリアルで説得力があった。

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 折りしも昨日のNY Timesに、配偶者と暮らす15歳以上のアメリカ人女性は、全体の49%になったという記事が載っていた。1950年には65%だったのが、1970年には60%、1990年には53%と減り続け、49%というのは2005年のデータ。減少の背景には、そもそも女性の平均結婚年齢が上がり、配偶者と暮らす期間が短くなったこともあれば、結婚という形式を選ばず、一緒に暮らすカップルが増えたこともある。また、記事が複数取り上げていたのは、いわゆる「熟年離婚」をして、自由を謳歌している女性たち。

 もちろん、配偶者と暮らしていない女性は孤独だとも、逆に配偶者と暮らしている女性は孤独ではないとも、一概には言えない。でも女性の生き方の選択肢が増えたことによって(それ自体は素晴らしいことだ)、不愉快な人間関係に我慢しなくてもよくなり、以前よりもはるかに簡単に人間関係を断ち切ることができるようになって、女性が孤独になる確率は高まったかもしれない。いや、これは女性に限らず、男性にも当てはまることだが。(ちなみに、男性の方が配偶者と暮らしている割合は多い。)

 「孤独でない」ということは、実はとても面倒なことである。すべての人間は不完全であるが故、大切な誰かがいるということは、その人のダメなところを我慢したり、足りないところを補ったり、落ち込んだときには慰めてやったり、守ってやったり、お互いにたくさんの迷惑をかけ合うということ。ときには投げ出したくなるような思いをしながら、この面倒な作業を日々続けていくことが、唯一孤独から逃れる方法なわけだが、これには結構忍耐がいる。

 夫婦に限らず、親子、兄弟、親戚など、「家族」の形が時と共にずいぶん変わってきた。我慢しない自由を得て意気揚々としている我々の世代が、不自由で、不都合で、面倒な人とのつながりの価値を再認識する日は、そう遠くないような気がする。
by oktak | 2007-01-18 10:56 | 映画
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